2018-12-20

バトン

父が旅立ち、半月がたった。

そこらじゅうに父の気配があり、父との日常を感じると同時に、つい最近までの父との長い時間はみんな幻だったのではないかとも感じる。記憶の彼方にある幼い頃の夏休みのように。

慌ただしさの中で一度だけ心穏やかになったのは、お寺に行った日だった。雪深い森の中にある静かなお寺。冬桜が雪の帽子をかぶってささやかに咲いていた。桜の木の下には父が植えた花たちが春を待っているんですよと住職が教えてくれた。
帰りにはお寺の猫の「南無ちゃん」が見送りに来てくれた。我が家の猫と同い年。祖父の法事以来、9年ぶりの再会だった。

私は父からバトンを受け取った。
次の世代を守り育てるための。私たちは未来へ進むのだ。